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<男女共同参画室取材班が行く!部局訪問>工学系研究科・求幸年教授「全ての構成員が働きやすく学びやすい環境の実現に向けて」

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2024.1.29

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<男女共同参画室取材班が行く!部局訪問>工学系研究科・求幸年教授「全ての構成員が働きやすく学びやすい環境の実現に向けて」

 2023年3月に「働き方改革行動宣言」を発出した工学系研究科。当時男女共同参画室委員の一員だった求幸年教授に背景などについて、お話を聞きました。

―「働き方改革行動宣言」などを発表するのに先んじて、大規模アンケートも実施されたと伺いました。経緯を教えてください。

 私自身は、2021年度と2022年度に研究科長特別補佐を務めた際に、工学系の男女共同参画委員会のメンバーに加わりました。当時は石坂香子先生が委員長で、私が加わった直後に、ワークライフバランスに関するアンケートを実施することになりました。

 このアンケートは特任を含めた教員を対象としたものです。工学系においても、大学全体としても、様々なワークライフバランス関連の支援があるのですが、それらの認知度や育休取得状況といった基本的な情報を集めることを目的としていました。実施してみたところ、想定を遥かに超える200名程度から回答をいただきました。

 驚いたのは自由記述欄です。業務改善や意識改革、現場の不安やストレスなどについて悲鳴に近い意見や要望が大量に寄せられました。これを見て、ワークライフバランスだけでなく、もっと広い視点からの取り組みが必要であることを認識しました。

 そこで、石坂先生と熊田亜紀子先生を中心に、若手の先生方にも加わっていただき、今後の進め方について議論を行い、最も重要なのは「全ての構成員が働きやすく学びやすい環境で自らの能力を最大限に発揮できること」という話になりました。それで働き方改革に取り組むことになったわけです。

 2021年9月に「働き方改革に関する取り組みについて」と題して幅広く意見照会を実施しました。そこでは、上記のアンケートの結果と合わせて今後の取り組みの素案を示した上で、各学科・専攻における現状の整理や問題点、ベストプラクティスの抽出などお願いしました。そうしたところ、再び膨大な意見や要望が寄せられました。

 これらをもとに、「働き方改革アクションプラン」をとりまとめ、11月の学科長・専攻長会議で提示しました。それをふまえて、12月には教員だけでなく事務組織も含めた意見照会を再度行い、2022年4月にバージョンアップしたアクションプランを全構成員に向けて発出しました。

 「働き方改革アクションプラン」は、業務の効率化・最適化、若手支援・ライフイベント支援、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)推進という3つの柱からなっています。ただ、これらは重なり合うところもあるので、総合的に取り組んでいく必要があります。

 アクションプランの発出と同時に、すぐに取り組めることとして、会議時間に関するガイドラインや、産休・育休取得者の採用等の対象年齢に関する申し合わせの策定も進めました。その後、働き方改革セミナーや働き方改革推進事業も実施し、2023年3月に行動宣言を発出したという流れになります。

―寄せられた意見をどのように取りまとめたのでしょうか。

 工学系には18の専攻があり、それに加えて多くの機構や事務組織もあります。それらから上がってきた意見や要望の全てを掬い上げることは難しいですが、出来るだけ多くの構成員に共通する問題を抽出し、研究科全体として取り組むべき方向性を見定めるよう努力しました。アンケートや意見照会の結果、多くの組織に共通する問題が存在することや、他の組織で実施していることを展開することが解決の糸口となりそうなことなどが見えてきました。

工学系研究科・求幸年教授「全ての構成員が働きやすく学びやすい環境の実現に向けて_2
―実際にアクションプランや行動宣言を出して反響はいかがでしょうか。
工学系研究科・求幸年教授「全ての構成員が働きやすく学びやすい環境の実現に向けて_3

 こうした取り組みは是非積極的に進めてほしいという反応が数多くありました。皆さん個々に様々な問題を抱えているものの、オフィシャルな枠組みがないと草の根的には言い出しにくい。たとえば、こんな時間に会議があると子どものお迎えで出られないといったことはこれまで言いにくかったけれど、会議時間についてのガイドラインが策定されたことで、言いやすくなったといった声をいただきました。また、働き方改革推進事業についてもポジティブな反応とともに、今後もっと拡充して欲しいという声もいただきました。

 労力はかかりましたが、反響があると、やった甲斐はあります。潜在的な要望がたくさんあるということが浮き彫りになったのは良かったです。アンケートや意見照会を実施しなければわからなかったことがたくさんあったと思います。

―女性教員を増やす取り組みについてはどのように取り組まれていますか。

 もともと理系は女性が少なく、工学分野においても少ないのが現状です。学生より教員はさらに少なく、世に言うリーキーパイプライン(パイプラインの水漏れ)問題が浮き彫りになっています。この問題は根が深いため、今日明日で解決するようなものではありません。中長期的な視点と短期的な視点からの施策をうまく組み合わせて、根気強く取り組んでいく必要があると思います。

 短期的には、工学分野にも女性が活躍できる場がたくさんあることや、ダイバーシティを意識した奨学金をはじめ様々な支援策があることを伝えていくことが重要と考えます。企業も工学分野の博士人材、とりわけ女性の博士人材に大いに期待していることも伝えていきたいです。

 オープンキャンパスでも女性学生向けの取り組みとして、Tech Girl Meetupというイベントを行なっています。コロナ禍以来、オンラインで進めたことにより、地方の女性学生を含めた広い対象にアピールできたことは良かったと思います。こうした取り組みも今後継続し、拡充させていく必要があると思います。

工学系研究科・求幸年教授「全ての構成員が働きやすく学びやすい環境の実現に向けて_5

 中長期的には、もっとさかのぼって、小中学生にも働きかけていく必要があります。学生自身だけではなく、親や先生の意識も変えていく必要があると認識しています。工学系では、研究科長自ら中学校や高校に訪問する取り組みを続けています。また、昨年度立ち上げた「メタバース工学部」には、小中学生を含めた幅広い方々に参加していただいているとのことで、こうした取り組みに重要な役割を果たしていくものと思います。

―今後の展望についてお願いします。

 働き方改革行動宣の発出はゴールではなくスタートです。今後も構成員の声に耳を傾けて、アクションプランのさらなるブラッシュアップや働き方改革推進事業の拡充、D&I推進など、多角的に進めていくことが重要です。必要とされているところに必要なものが届くよう、きめ細やかな努力を継続していくことが求められます。

2024年1月12日取材・本郷キャンパスにて
聞き手:小川真理子
文・写真:中野円佳