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「UTokyo男女⁺協働改革#WeChange シンポジウム」イベントレポート

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2023.5.9

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「UTokyo男女⁺協働改革#WeChange シンポジウム」イベントレポート

2023年3月1日、東京大学伊藤謝恩ホールにて、「UTokyo男女⁺協働改革#WeChange シンポジウム」が開催されました。本シンポジウムは、女性リーダー育成に向けた施策「UTokyo男女協働改革#WeChange」を全学挙げて実施していくことを内外に宣言するとともに、今後のビジョンを議論する機会として開催されたものです。シンポジウムはオンライン配信され、約180名が学内外から参加しました。

開会の挨拶

東京大学理事・副学長 林 香里

東京大学は、令和4年度科学技術人材育成費補助事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(女性リーダー育成型)」に新規取組機関として選定されました。本学では女性リーダー育成に向けた施策「UTokyo男女協働改革#WeChange」を始動し、“東京大学が変わる”という強い思いで取り組んでいます。このシンポジウムは、本事業の採択にあたってのスタートだけではなく、全学を上げてジェンダー平等を推進することを表明するためのキックオフシンポジウムです。

このシンポジウムの目的は、問いに対して正解を探すことではなく、東京大学の問題意識を共有することで、男性による支配に偏り、均質的な研究、教育、職場環境が続いている大学、そして日本社会を変えていきたい、変えなければならないという危機感を、言語化し、共有することです。

多くの方に、東京大学の現状を変えたいという意思を持つ人が存在し、変わろうとしていることをお伝えすることで、大学内外に関わらず、ジェンダー平等に向けて仲間が増え、つながっていき、やがて大きな変化に結びつくと信じています。本日のシンポジウムが少しでも、東大の、そして日本社会のジェンダー平等につながることを願っています。

趣旨説明

東京大学副学長/男女共同参画室長 吉江 尚子

東京大学では国内外から幅広く女性を登用することを目標に掲げ、女性教員の雇用促進、女性研究者の育成、マジョリティに対する全学的な意識改革を計画しています。 これら3つの行動計画を着実に実施することで、目標へとスパイラルアップしていくことを目指しており、理念の共有とこれに関する議論が本シンポジウムの趣旨になっております。 

来賓の挨拶

文部科学省科学技術・学術政策局長 柿田 恭良(オンライン登壇)

社会の活力の維持向上を図る上で、特に女性が能力を発揮できる環境を社会全体で作り、女性の活躍促進を図ることが重要です。 科学技術イノベーションを活性化していくには、コミュニティの多様性確保や、様々な視点や優れた発想を取り入れる必要があり、そのために女性研究者の登用と活躍促進に向けた環境整備が重要な課題となっています。 女性の登用については、目標の早期達成に向けて更なる努力が必要で、東京大学には世界標準のダイバーシティ環境づくりに向けた取り組みを期待しています。 

海外からの応援メッセージ

テキサス大学オースティン校教授 鳥居 啓子(オンライン登壇) 

理工系への進学がポジティブに捉えられていないという無意識のバイアスによって、意気込みを挫かれている女性が多数存在します。このような状況は、世代が変わって、時間が経てば解決する問題ではなく、多面的なアプローチによる積極的な解決が必要です。 

トップダウン的なアプローチとして、リーダー職、上位職の女性比率を上げること、ボトムアップ的なアプローチとして小中高生や一般家庭に社会で活躍する女性のロールモデルを提示することが重要です。アメリカでは、出産や介護などのライフイベントと研究の両立を支援する資金制度が確立され、女性教授の数が大幅に増加しました。 

ジェンダーの多様性は、科学の進歩に繋がるだけではありません。超少子高齢化を迎える日本社会においては、優秀な才能をどんどん取り上げていく必要があるため、優秀な女性研究者を増やす取り組みは非常に重要です。

第1部 お茶の水女子大学長×東京大学総長対話 グローバルリーダーの育成に向けて

モデレーター:エッセイスト、東京大学大学院情報学環客員研究員 小島 慶子 

登壇者:お茶の水女子大学長 佐々木 泰子 東京大学総長 藤井 輝夫

「UTokyo男女+協働改革#WeChange」を今着手する理由 

藤井:大学の役割は、多様な人が集まって、対話を通じて知を共有し、創造することだと考えています。学問の世界でも、グローバルリーダーとして考えるときも、様々な視点から物事を見て、それをお互いが理解し共有することが非常に重要であり、東京大学でもそのような取り組みを行っていきたいと思っています。女性研究者が過小評価される状況がずっと続いている中で改革を行うことにより、理想の状態に近づけると考えています。 

佐々木:日本の大学のトップとも言える東京大学が、目標数値とともに女性研究者を増やすという力強いメッセージを出されたことは、社会を大きく変える可能性があると思います。大きな変化を起こすためには、個人だけでなく、環境や社会の理解、サポートなどが必要だと考えています。 

「UTokyo男女協働改革#WeChange」の具体的な取り組み

藤井:女性教員の数を増やすだけでなく、全構成員の意識改革も重要であると考えており、学内で考え方を学ぶ場を設け、大学院生や若手研究者の皆さんには、研究を行う上でスキルアップが図れるコース等も提供していきます。また、ロールモデルとなる方に大学にお越しいただき、女性研究者としての将来を描ける環境づくりも進めていきたいと考えています。

佐々木:女性が真に価値ある存在であるためには30%が基本になると言われていますし、東京大学が目指されているのは、まさにそこだと理解しています。そして、その意味で、150年前にお茶の水女子大学が生まれたことが、今日の女性活躍の出発点になったと言ってもいいのではないかと思います。

お茶の水女子大学では、女性リーダー育成に長年取り組んでおり、現在3つの研究所からなるグローバル女性リーダー育成研究機構で、多様性と包摂性に富む女性リーダーの育成に取り組んでいます。また、女性にフォーカスした支援だけではなく、ジェンダーを問わない全ての構成員のウェルビーイングを目指した取り組みも考えているところです。具体的には、キャリアの中断を余儀なくされた女性研究者を支援するための特別研究員制度、学内保育園に子どもを預ける方への育児支援奨学金、活躍されている女性研究者への表彰制度などがあります。

「UTokyo男女⁺協働改革#WeChange シンポジウム」イベントレポート_5

小島:東京大学が、クリティカル・マスと言われる30%ではなく25%を目標に設定したのはなぜでしょうか。 

藤井:実現可能な数字として25%を掲げましたが、それをクリアする過程で環境が整っていくと思うので、時期が来れば30%に修正することも検討しています。

女性採用の形骸化について

小島:数値的には女性が増えているものの、組織の本質的な部分については依然として男性によって意思決定がなされているという現状があると思います。そうならないように、東京大学で何か意識されていることはありますか。

藤井:大きく二つあります。まず、意思決定層である役員や教授・准教授の女性比率を増やすことです。もう一つ重要なのは、教育や研究にダイバーシティを取り入れていくということです。ジェンダーに関することを研究対象として扱い、研究の中に積極的に取り入れていくということも大事だと考えています。 

小島:お茶の水女子大学のジェンダーイノベーション研究所では、具体的にどのような研究をしているのですか? 

佐々木:この研究所では、性差が見過ごされていることに対して問題提起し、積極的に性差解析を行って研究開発のデザインに組み入れることで、知の再構成を促し、研究にとどまることなくイノベーションを創出し、社会の多様性と包括性を促進することを目指しています。 

現在、学生がジェンダーイノベーションについて理解を深めるための講義を東京大学とともに計画しており、学生同士の協創による知の再構成と価値の創造を目指しています。 

藤井:ダイバーシティはジェンダーに限られるものではなく、例えば東京大学では当事者研究を通じたバリアフリーについての取り組みもあります。ダイバーシティをどのように推進していくかを研究の対象としても考えていく環境づくりができればと思います。 

期待される社会への影響

佐々木:総合大学である東京大学とコンパクトな女子大学のお茶の水女子大学が協創することで、新しい価値やイノベーションが生まれることが期待されると思います。また、未来を創る人たちの教育を、ともに取り組んでいきたいと思っています。 

常に変革を求める東京大学の存在は、本学のみならず、日本、アジア、世界の大学の在り方を模索するための基準になればと思っています。 

藤井:女性の研究者・学生の皆さんが来たくなるような環境に東京大学を変えていくことが、第一に重要だと思います。東京大学で多様性について考え、学んだ学生が社会に出て活躍することで日本社会の意識も変わっていく。そのような循環を作ることができれば、日本社会が女性活躍できる場になっていくのだと思います。この循環を活発にし、日本や世界が変わっていくことに貢献できたらいいなと考えています。 

小島:女性が学びやすい環境は、病気になっても、家族に変化が起きても学び続けられるような環境だと思うので、男性の研究者、学生にとっても価値のあるものだと思います。

第2部 パネルディスカッション 学生・若手研究者と考える数のパワー

モデレーター:東京大学副学長/男女共同参画室長 吉江 尚子 

登壇者:

東京大学大学院総合文化研究科助教 小田 有沙 

東京大学大学院総合文化研究科修士課程1年 徳永 光治 

東京大学教養学部前期課程2年 長尾 すみれ 

NPO法人グッド・エイジング・エールズ代表 松中 権 

東京大学理事・副学長 大久保 達也

東京大学の現状について

吉江:藤井総長の決断により、東京大学の役員9名のうち女性の数が4名まで引き上げられました。一方で、教員の女性比率は14.6%にとどまり、役職が上がるにつれて減少傾向にあります。学生の女性比率については、学部学生で20.1%、留学生も多い大学院学生では27.8%となっています。  長尾さんにお話を伺いたいのですが、女性学生比率20%という状況は、学生としてどのように感じていますか。

  

長尾:授業のグループワークで女性1人になることが多く、過度に女性としての意見を求められるなど、違和感を覚えたり居心地の悪さを感じたりすることはあります。女性が当たり前の存在として扱われていないと感じる場面も多いです。

小田:私も学生の頃から同様の違和感を持っていましたが、教員になって妊娠、出産を経験する中でマイノリティ性というものの課題をより実感しました。マジョリティが制度を作るとマイノリティのことが全く考慮されないのはもちろんのこと、今私が直面している妊娠や子育てに関しては、非常に個人差が大きく、カバーが難しい領域だと思います。  また、ライフイベントは一度個人レベルでクリアしてしまうと、再び気に掛けることがなく、また別の問題で手いっぱいになってしまうので、自分の時間を割いて、後に続く人のために制度を整理するということが難しい。変えるためには仲間を集める必要があるのに、その仲間が少ないので見つけにくいというのがマイノリティの課題だと思います。

徳永:マイノリティ側の人が、マイクロアグレッションなど、日常の中で差別や抑圧を受けているというのは、マジョリティ側の私も感じています。自分ができることとして、マイノリティの立場の人が置かれている状況について知識をつけ、認知的な共感力を高めていくことを考えています。そうすることで自分が当事者でなくても、マイノリティの人と一緒に声を上げることができるのではないかと思います。マイノリティ側に立つ可能性というのは誰にでもありますし、それはマジョリティの人間にとっても意義のあることだと思っています。

松中:皆さんのご意見に共感しました。東京大学という組織自体がもつ人格のようなものがあって、それとみんなが戦っているような印象を受けました。その人格は、おそらく男性的な人格ではないかと思います。 

数で目標を掲げるような価値観も大事ですが、マイノリティではない方々の考えや行動も非常に重要で、社会や組織を変えていくのではないかと思いました。このような人たちの可視化は、今後重要になると思います。 

大久保:東京大学は科類と第二外国語でクラス分けをしますが、ドイツ語を希望する女性学生が少ないため、ドイツ語を学びたい学生がフランス語を選ぶとか、女性比率の少なさによって、一番重要であるはずの学びが阻害されてしまうという状況があることも、皆さんに知っていただきたいと思います。

 

東京大学に望むこと 

小田:東京大学は大きな組織なので、マイノリティの立場の人もたくさんいると思っています。たくさんのマイノリティの立場の人の声を拾い上げて、対策やシステムを作り上げてもらえると嬉しいです。 イベントではロールモデルとして女性教員の話を聞くことが多いですが、ワークバランスが取れている男性教員の話を聞くのも面白いのではないかと思います。

長尾:女性学生が増えることは未来志向のメリットと結びつけられがちですが、現時点で存在する不平等の格差を是正する取り組みは、マイナスをどのようにゼロあるいはプラスに持っていくかというもので、なんとしてでも行われなければならないことだと思います。

学内にジェンダー問題にアプローチする学生団体は数多く存在するものの、学生が卒業していってしまうことから持続可能性を持って問題意識をつないでいくことができていないという現状があり、大学本部により近い組織に活動拠点や窓口が準備されることが、一つの解決策として挙げられるのではないかと思います。 

徳永:ジェンダーやセクシュアリティにおけるマイノリティ側の状況について、学生の知識の底上げが必要だと思うので、全学的な教育制度を実施してほしいです。立場の弱い人が立場の強い人に声を上げるのはとても勇気がいることであり、相手が悪い、社会の構造が悪いのだと気づくためには、自分で知識を持つことが重要だと思います。 

勇気を持って声を上げた人の安全が確保され、相談できる機関が必要だと考えており、権力を持つ人々が透明性を持って議論し対応してくれるような環境が望ましいと思います。 

松中:様々な団体が一丸となって社会問題を解決するコレクティブインパクトで、外の人たちと一緒に東京大学を変えていくことが重要だと思います。企業などのジェンダーに関する取り組みの先進事例を大学に持ち込む、また東京大学で学んだ学生が企業に進む、という過程で、東京大学を変えることが社会を変えることに繋がる、というサイクルができると思います。 

また、プロジェクトを実験として見立て、どう変わったか、成功したのか、といった結果をぜひ公表してほしいと思います。もし失敗したとしても、社会を変えるためのドライバーになるのではないかと思います。 

大久保:この場で出てきた問題提起は、改善のきっかけになる極めて重要なものだと思いました。常に課題は現場にあるものと思っています。藤井総長は対話をベースに活動を進めていますが、我々も現場からの声を待っています。声を集めること、声を聴くことは大学本部の責任だと思っています。 

閉会の挨拶

東京大学副学長 伊藤 たかね

ダイバーシティ&インクルージョンが掲げられ、取り組みを始めて以来、女性の数を増やすことについての大学執行部の考え方は確実に変わってきているという実感を持っています。 一方で、変えなければならないのは数だけではなく、大学構成員の意識も変える必要があると考えています。「#WeChange」で「私たちは変わる」ということを宣言させていただきました。これからも東京大学の変化を厳しい目で、しかし同時に温かく見守っていただければ幸いです。 

 

 

リポート:学生ライター 向井小夏(教育学部3年) 

構成・写真:男女共同参画室