2025年2月27日に、国際女性デー(3月8日)を記念するイベントとして「大学院生時代のライフイベントをどう乗り越えたか―経験者に訊いてみよう」を学内限定で開催しました。イベントは2部構成で実施し、約34名(対面・オンライン合計) の方にご参加いただきました。
【第1部】
第1部では、大学院学生時代のライフイベント(主に妊娠・出産・子育てなど)の経験者による座談会をオンラインと対面のハイブリットで実施しました。
モデレーター:松山桃世(生産技術研究所 准教授)
登壇者:辰馬未沙子(理化学研究所 研究員)、高木健(工学系研究科 特任助教)、豊島まり絵(教育学研究科 博士課程学生)・浅井幸子(教育学研究科 教授)
1日の過ごし方
まずは各登壇者から自己紹介の後、育児をこなしながらの1日の過ごし方についてお話しいただきました。パートナーとの協力体制のもと子育てをしている方もいる一方で、パートナーの単身赴任などで「ワンオペ」状況にいる方もいらっしゃいました。利用している制度として、ベビーシッター助成や病児保育が挙げられました。パートナーとの日々の交渉や、保育士やベビーシッターの子どもとの接し方、パートナーの育休取得に助けられた話などがありました。
研究室の選び方
登壇者の皆さんはどのように研究室を選んだのでしょうか。それぞれの例を見てみましょう。
豊島:子どもがいる状況で他学の修士課程から博士課程に進学しました。研究室選択にあたり、複数のゼミを見学した時に、浅井先生のゼミは、ハイブリッドで開催されており、終了時間も比較的早く、アットホームな雰囲気があることを感じました。この感覚は間違っていなかったと思います。子育てしているゼミ生が多いわけではないのですが、子育てをしながらの参加を、温かく受け止めてくれる土壌があります。
辰馬:修士の時にラボを選んだが、テーマだけで選びました。博士課程学生の時に出産しようと決意できたのは、国立天文台の保育ルームの存在が大きかったです。自治体の保育園は点数で入園の可否が決まりますが、就学(博士課程学生の身分)では点数が低いことが多く、就労が優先される傾向があります。認可保育園の入園は難しいと思っていたので、当時の研究室があった国立天文台の保育ルームの存在が大きかったです。周りの理解もありました。
高木:PIや研究グループの上の世代の男性が育児に積極的に参加する人が多く、週末に子どもを連れて研究室に来る様子を見ることもありました。だからそこを選んだというわけではないのですが、子育てに理解のある職場であることは確かです。

参加者の皆さんへのメッセージ
最後に登壇者の皆さんから参加者へのメッセージを共有していただきました。
高木:子育ては大変なことがフォーカスされがちですが、人間として成長するいいチャンスだと思います。そして、将来、自分がPIなどになったときに役に立つ良い経験だと思います。
辰馬:子育てに限らずですが、上の人から言われたのは健康が第一ということです。理論研究はのめりこむ人が多いのですが、それだと長くは続かないので、健康が第一だと思います。
豊島:子育てをしながら研究を進めているみなさん、一緒に頑張りましょう。東大は発信力を持っていると思います。東大にはその発信力をもって、子育てする人がみんな笑顔になるよう、支援や制度の充実を推進してもらいたいと強く願います。
浅井:子育てをすることもしないことも多様性として、みんなで研究ができたらいいと思います。子育ては負担ということばかり考えて研究というのでは、どうしても世界が狭くなってしまうし、子育てしている人だけで研究をやっていっても世界が狭くなってしまいます。みんなで、経験を豊さに変えられる方法を考えていきたいと思います。
松山:ライフイベント経験者だけではなく、研究している人全体で考えたいですね。
最後に
第1部では、日本の学校教育では「いかに自分を律することができるか」ということを重要視してきたことから、「制御できない子育て」とどのように向き合うかということも課題になるのではないかという議論もありました。また、大学院学生が使える支援や制度が少ないことについても問題意識が共有されました。登壇者の中には「長期履修制度」を使った方もいらっしゃいましたが、大学院学生向けの子育て支援のための制度がほとんどないことを私たちも問題視していて、子育て中の大学院学生が研究を諦めずに進められる支援や制度の設計についてこれからも考えていきたいと思います。
【第2部】
第2部ではネットワーキングイベントが対面のみで実施されました。文系と理系で分かれ、穏やかな雰囲気の中で意見交換が行われました。育児中の博士課程学生が抱える困難として、経済的側面や精神的側面から生じるものがあり、それらを支援するためにはそのような制度があると良いのかなど様々な意見が出ました。最後に付箋に参加者の思いを残してもらい、まとめました(写真)。
